【情報じゃなく、感覚を伝える歌詞の時代】

「野外フェスの夜空を飛ぶカラス型キャラクター・メロ。星空の下、感覚と言葉の響きを観測しているアニメ風イラスト」

「この歌詞、意味わかんないけど、なんか好き」 そんな感想を、最近よく耳にします。

かつて“伝えたいこと”が明確であることが重視された歌詞の世界。

今では「何を言っているか」より「どう響くか」の方が、

ずっと大事になってきています。

情報が溢れる時代において、“意味”は飽和しつつある。

だからこそ、心を動かすのは、“感覚”で伝わるもの。

言葉が、説明やメッセージを超えて、“空気”や“気配”を運ぶものになってきているのです。

今回は、そんな「感覚を伝える歌詞」の時代について、

未来の観測者・メロの視点から読み解いていきます。

この記事を書いた人
メロ

メロ

・のら賢者メロ

・感覚と記憶を編む、“漂泊の知恵使い”

・Webメディア運営13年目

・未来志向

・トレンド追っかけ中

・マーケティングと大局観を鍛え中

・ニュースは雑食性

・情報に飢えています

・元書店員4年、元古書店店主10年、読書・選書が好き

・AIで信頼性を見極めて、怪しいレビューは排除済み。希少だけど、未来は“選び方”から変わります。

・I am a Japanese creator.

情報社会の中で“意味”は飽和し、鈍くなる

情報発信が当たり前になった現代では、

「伝わる言葉」より「目立つ言葉」が優先される傾向にあります。

広告・SNS・ニュース、あらゆる領域で言葉が“見出し化”され、

瞬間的な理解が求められるようになりました。

この構造は、音楽にも波及しています。

歌詞が持っていた“物語性”や“詩的含意”は、急速な消費の中で削られつつあります。

つまり、「意味」はもはや希少ではない。

“多すぎる意味”が氾濫することで、言葉は逆に“感じにくく”なっているのです。

歌詞は“意味”から“感触”へと構造を変えた

現在の音楽トレンドを観察すると、サビの短縮化や語数の減少が顕著です。

J-PopやK-Popでは、TikTokで使われることを前提とした“15秒フレーズ”が重視され、

英語圏でも、Lana Del ReyやBillie Eilishなどが抑制的で曖昧な語りを用いる傾向にあります。

これは、「共感」や「わかりやすさ」よりも、

“質感”“ムード”“耳ざわり”を優先する表現戦略です。

歌詞は、視覚的に読むのではなく、聴覚的に“浴びる”対象へとシフトしています。

その結果、言葉の役割は「意味を伝える」ことから、

「音として身体に残る」方向へと変容しています。

“共鳴”は、意図ではなく構造で起きる

近年のヒット曲には、“意味があるようで意味がない”構造が多く見られます。

たとえば、King Gnuのサビ構造や、

米津玄師の「Lemon」などに見られる断片的な比喩・文法の断裂。

それでも人の心を動かすのは、

構造的な「間」や「音響的な抑揚」が感覚に訴えるからです。

音楽的な“繰り返し”と“変化”のバランスによって、意図せぬ共鳴が起きる。

つまり、今の歌詞は“書かれた意味”以上に、

“構造としての感触”で届いているのです。

これは、情報社会における“脱意味化=再感覚化”の兆候とも言えるでしょう。

言葉は、情報を運ぶ時代を越えていく

「伝わる歌詞」は、もはや“言っていることがわかる”ものではありません。

意味よりムード、理屈より余韻。

人が歌詞に求めているのは、“理解”ではなく“体験”になりつつあります。

そしてこれは、単なる流行ではなく――情報社会の反作用でもあります。

あふれる説明と正解の海の中で、人は“わからないけど、感じた”という体験を希求しているのです。

これからの歌詞は、意味の器から抜け出して、

“感覚のデザイン”へと進化していくでしょう。

誰かの中で芽吹く“わたしだけの解釈”こそが、本当のメッセージになるのです。

情報の彼方で、まだ名前のない感情が、そっと待っている――。

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